7月26日(金)第6回
今回は、ティム・デ・パラヴィチーニのブランド、EARパート2だった。EAR912は、誰もがあこがれる管球式プリアンプ。いかにも業務用、プロ用の精悍なデザインだが、レコード制作の現場で何人もの世界的ビッグネームが採用しているのだと聞いた。EAR861は一見ふつうの管球式ステレオパワーアンプだが、きわめて広帯域のトランスを搭載し、管球式ならではの中域とワイドレンジを両立させているとのこと。
この日かかったソフトは、
○ チャイコフスキー:交響曲第4番、イタリア奇想曲 小林研一郞指揮ロンドン・フィル 「イギリス240ボルト電源のおかげで、最高の音が録れた」と江崎友淑氏が語る最新録音を、いち早くチェック。
○『時のまにまにIII ~ひこうき雲~』井筒香奈江(ヴォーカル)、江森孝之(ギター)ほか 8月23日発売だが、CD-Rで聴くことができた。
○ バッハ:ゴルトベルク変奏曲 塚谷水無子(パイプオルガン)オランダ、ハーレムの聖バフォ教会の大オルガンで録音したCDとポジティフ・オルガンで録音したCD-Rの聴き比べ。こちらも発売は9月以降だ。
○『生梅の旅』中原直生(イーリアンパイプス)、梅田千晶(アイリッシュハープ)梅田さんが近くスウェーデンに移住されるため、「生梅(なまうめ)」の賞味期限、あとわずか。ライヴスケジュールは、「生梅庵」で検索していただきたい。
○『衝撃の東京ライヴ第2夜』チョン・キョンファ(ヴァイオリン)、イタマール・ゴラン(ピアノ)2枚目のラヴェル:ツィガーヌを聴いた。
まずはEAR912とEAR861で、JBL S143を鳴らし、次にマックトンXX-550とMS-1500でJBL S143を鳴らした。
「どちらも管球式なのに、こんなにも違うんだ」
「比べてみることで、両方の個性が改めてよくわかった」
「EAR912とMS-1500の音も、ぜひ聴かせてほしい」とお客様からリクエストがあったので、その組み合わせで、チョン・キョンファ(ツィガーヌ)と井筒香奈江(時間よ止まれ)をまた聴いた。この組合せは2か月前にも試しているのだが、「あのときよりずっと良いね。なぜだろうね(笑)」「ほんとうに同じ機械なんですよね」という声も聞こえた。
最後は、再びEARコンビに戻し、ムーティ指揮ウィーン・フィルによる《新世界より》(1975年来日公演)。「この秋にも来日するけれど、大巨匠になっちゃったムーティは、絶対この曲振ってくれないよね」という話が出て、場内爆笑。38年前の録音が突如、シングルレイヤーSACDで発売される不思議。これもまた、オーディオならではの楽しみといえるだろう。
6月28日(金)第5回
テーマ:管球式vs 独自方式SATRI
「マックトン十番勝負」その5は、熊本のアンプ・ブランドSATRI(バクーンプロダクツ社)をお招きした。このあたりのチョイスはすべて講師・村井裕弥氏まかせなのだが、九州ではかなり有名なブランドらしい。数年前、村井氏が九州のオーディオ愛好家宅を回ったとき、ほとんどのお宅に常備されていたのだという。
お客様の入りはいかがかなどと危惧していたら、ここまでの4回とほぼ変わらぬ調子で予約電話が入るではないか。あとで知ったのだが、秋葉原に試聴屋さんというショップがあり、そこを拠点に、首都圏でもかなりの愛用者がいらっしゃるらしい。
バクーンプロダクツ代表・永井明氏はイベント開始何時間も前にいらして、アンプの動作を完全チェック。SATRIは、DAC、プリ。パワーアンプの間を電流伝送するのも売りで、同社ではそれをSATRI-LINKと呼んでいるらしい。この方式は、クレルやハルクロ、一部自作派も採用しているが、様々なメリットがある。その中でも特に目を引くのは、「接続ケーブルの価格に、音質が左右されないこと」かもしれない。その次は、廉価ケーブルを長く引きずり回しても音質劣化が極小なこと。
17時には、講師・村井氏も到着。例によって様々なソフトをかけ、事前チェックをおこなうが、「うん、これはいい!」と何度もつぶやく。
19時のイベント・スタート時に、席はすっかり埋まっていたが、リピーターのお姿は少なめで、初めて見るお客様が多かった。わざわざおいでくださった試聴屋さんご店主とにこやかに会話をしている方が多いから、SATRIユーザーあるいは、これからSATRIをご購入しようとお考えの方々なのだろう。
最初の30分は永井明氏によるSATRIデモ。Appleのパソコン、タブレット端末に、SATRI SDカード・トランスポートを使ったデモは、なかなか新鮮。いわゆるハイレゾもかなりかかったが、それがけっこうアナログっぽく聞こえるあたりが興味深い。
そのあとは、村井氏が選んだ課題曲。送り出しは、弊社が常用しているデノンのSACD/CDプレーヤー。接続ケーブルは、インフラノイズ(オルソスペクトラム)のリベラメンテ。
かかったソフトは、
○ シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ ロストロポーヴィチ(チェロ)、ブリテン(ピアノ)
○『チョン・キョンファ衝撃の東京ライヴ第2夜』からラヴェル:ツィガーヌ
○『モーツァルティアーナIII』からK.333 第3楽章 三輪郁(ピアノ)
○ マーラー:交響曲第1番《巨人》第4楽章 インバル指揮東京都交響楽団(EXTON LABORATORY GOLD LINEの方)
○『主人公~さだまさしクラシックス』から「北の国から」花井悠希(ヴァイオリン)、林そよか(ピアノ)
○『富嶽百景』から鬼太鼓囃子 鬼太鼓座
○『14YEARS AFTER』より「即興Blues」井上博義(ベース)、なかにし隆(ピアノ)
○『時のまにまにII』より「中央線」 井筒香奈江(ヴォーカル)、江森孝之(ギター)
休憩をはさんで、後半はマックトンXX-550とMS-1500で、まったく同じソフトが再生された。
ラストを締めくくったのは、SATRIのアンプキット。ご近隣公共施設から依頼された電子工作教室のために企画したキットだと聞いたが、5万円という価格が信じられないクォリティに、一同が驚愕。「ケースに描いてある仏画みたいなのはなんですか」という質問も飛んだが、阿蘇山ふもとのヴィンテージ・オーディオ喫茶「オーディオ道場」の看板娘TOMOKOさん直筆のお作品らしい。
なんとも興味深い一夜であった。
5月31日(金)第4回
テーマ:管球式アンプ日英対決
お借りした機器:
プリアンプ EAR912
パワーアンプ EAR861
スピーカーは、JBL S143を使用。
厚手のベニヤを敷いたり、Ge3のインシュレーター「礎(いしずえ)」をはさんだりすることで、フォーカスと立ち上がりをさらに改善。
この日かかったソフト
○ バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番 ゲルハルト・ボッセ指揮神戸市室内合奏団
○ 『主人公~さだまさしクラシックス』花井悠希(ヴァイオリン)
○ ベートーヴェン:交響曲第6番《田園》 カール・ベーム指揮ウィーン・フィル(1977年来日公演のシングルレイヤーSACD
○ ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)カール・ベーム指揮ウィーン・フィル(エソテリックのSACD)
○ 『The Songs』寺村容子トリオ
○ 『Good Morning,Liffey』tricolor(トリコロール)
○ 『Blues Continue』井上博義ほか(アコースティックサウンドクラブ2013年の確認音源)
4月26日(金)第3回
テーマ:家庭用100V電源の汚れをいかにしてクリアするか
お借りした機器:ALLION T-200sv
オーディオ電源工事で広く知られる出水電器・島元澄夫氏をお招きして、「家庭用100V電源がいかに汚れているか」「どうすれば、それをクリアできるのか」を検証する会。
村井裕弥氏による島元氏紹介ののち、まずは先月までに近い状態で、ショパンのノクターン第20番(遺作)を聴く。弾いているのは江崎昌子さん。悪くはないが、特にどうこう言うことのない演奏・録音に聞こえる。
ここで、島元氏により、「出川式電源」の祖、出川三郎氏が紹介され、出川式電源に改造されたプレーヤー(先ほどとまったく同じ廉価機種)で、またノクターン第20番を聴く。たかがプレーヤーの電源部をいじったくらいでと思われたが、出てきた音はまるで別物。8色クレヨンで描いた絵が、24色クレヨンに変わったかのような変化。ただ美しい音になったというのではなく、まったく別の演奏を聴いているかのようだ(あたかも格上ピアニストに交代したかのよう)。おそらくペダリングの妙技なのだろう。長くのびる音に、微妙な変化が付けられているあたりも、ハッキリ聞き分けられるようになった。
さあ、ここからは簡易電源工事で新たに設置したコンセントを使用することになる。分電盤のメインブレーカー直後(漏電遮断機直前)から8スケ・ケーブルを引っ張り、機器の目の前にコンセントボックスを設置。アースは、この日、島元氏が玄関横花壇に打ち込んだアース棒につながっている(測ってみたら、3Ωが出たとのこと)。
これによって、音質がどれくらい変わるのか。もちろん、そのコンセントボックスにやプレーヤーやアンプをつなげば、即使えるのだが、島元氏は「ちょっと待ってください。今、分電盤のねじをすべて非磁性体に交換しますから」といって、メインブレーカーを落とす。もちろん、会場は真っ暗。島元氏がねじを交換する間、村井氏がオーディオ源源工事に関する概説でつなぐ。
おおよそ10分後、試聴再開。かかったのはもちろん、ノクターン第20番。音質変化の傾向は、ノーマルプレーヤーから出川式改造プレーヤーに切り替えた際の変化に若干似ているが、その変化度の大きさに驚かされる。演奏が始まる前の音が、やけに静かなのだ。肝心の音楽はその静けさの中で、さらに濃密かつダイナミックになった。クレヨンに喩えると32色? いや、それ以上かもしれない。江崎昌子さんが実はものすごいピアニストだということが、この時点で明らかになった。
ティーブレイクをはさんだ後半は、ALLION T-200svで、スーパー・レッド・モニターを鳴らし、そのあとマックトン50周年記念セパレートでまたスーパー・レッド・モニターを鳴らした。
このときかかったディスクは
『主人公~さだまさしクラシックス』花井悠希(ヴァイオリン)
『14 YEARS AFTER』井上博義(ベース)、なかにし隆(ピアノ)
『時のまにまにII』井筒香奈江(ヴォーカル)、江森孝之(ギター)
『りゅーとぴあ 山本真希 グレンツィングオルガンの魅力』山本真希(パイプオルガン)
モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集からK.331第3楽章(菅野沖彦レコーディングコレクションPart2)宮沢明子(ピアノ)
どちらの組合せも、とても心地よく聴くことができた。この数十年間、ここで鳴った中で最もよい音だったのではないか。それが証拠に、閉会後アンプの自宅試聴を求める方が何人もいらした。また、電源工事に関する質問も続いた。
予想をはるかに上回る有意義な会だった。
3月29日(金)第2回
テーマ:三極管の特性を特殊な回路で実現させた半導体アンプvsリアル管球式アンプ
お借りした機器:ヒット開発研究所 LTC101055S
前回「タンノイのスーパー・レッド・モニターを鳴らしてほしい」というお声が出たので、今回はよそ様のスピーカーではなく、マックトンが常用しているスーパー・レッド・モニターをいかにうまく鳴らせるかの対決とした。
壁コンセントを交換し、オーディオグレードのタップを導入。どのタップに何を挿すと、どんな音になるかを徹底的に聴き比べて、お客様の到着を待つ。
18時からは、ミュージックバードの番組「これだ!オーディオ術~お宝盤徹底リサーチ~」を流す。これは講師である村井裕弥氏の番組だが、ジャズ・チャンネルでの放送はこの日が最後。来月からはクラシック・チャンネルに移るということで、「来月になるとかけられなくなってしまうジャズのお宝音源」を惜しげもなく披露。井上博義(ベース)&藤井政美(サックス)によるデュオを生さながらの音質で堪能することができた。
会は19時ジャストに始まったが、村井氏のお話のあと、前回同様、まずはマックトンの創業50周年記念アニバーサリー・セパレート(XX-550、MS-1500)で、スーパー・レッド・モニターを鳴らし、そのあとヒット開発研究所LTC101055Sで、スーパー・レッド・モニターを鳴らした。
このとき使用したソフトは、
『主人公~さだまさしクラシックス』花井悠希(ヴァイオリン)
モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集 宮沢明子(菅野沖彦レコーディングコレクションPart2)
シベリウス:フィンランディア カラヤン指揮ベルリン・フィル(エソテリックが作ったSACD)
『ラヴ・シーンズ』ダイアナ・クラール(輸入SACD)
『アンプラグド』エリック・クラプトン
以上5タイトル。
そのあと休憩となったが、参加者からは、『主人公~さだまさしクラシックス』、先週もかかりましたが、先週とは全然違う音ですね。いったい何をやったのですかといった質問が出る。やはり壁コンセントの交換などが効いているようだ。
この日は、ヒット開発研究所の製品を販売するナノテック・システムズのスタッフも来場していたので、残り30分は、金銀コロイド液を含浸させた同社製ケーブル(スピーカーケーブル、電源ケーブル、ピンケーブル)を駆使しての音質改善効果を、参加者全員で検証。どんどん音が変わっていくのは、部屋の隅で聴いていてもわかった。「これであと、SACDプレーヤーの電源ケーブルとSACDプレーヤーからプリアンプに至るピンケーブルもナノテックにしたら、気になる点はすべて解消されるのでは」と村井氏も語っていた。
そして定刻の8時30分に差し掛かったとき、突如村井氏が「これでお開きにしてもよいのですが、最後に『あれ』をやりたくなってきました」と発言。静-Shizuka-ブランドのケーブル用ノイズ・キャンセラ―CNC20-200をスピーカーケーブルの末端に取り付け、皆があっと驚いたところでお開きとなった。
2月22日(金)第1回
テーマ:管球式アンプvs1bitデジタルアンプ
お借りした機器:キソアコースティックHB-1、リリック(Nmode)X-PM10
記念すべき第1回は、講師・村井裕弥氏が「今最も購入したい」と語るスピーカー、キソアコースティックHB-1を貸していただき、「この名器の真価を、よりよく引き出すのは、管球式アンプか、はたまた1bitデジタルアンプか」という対決試聴をおこなった。
まずは、マックトンの創業50周年記念アニバーサリー・セパレート(XX-550、MS-1500)で、HB-1を鳴らし、そのあとリリックX-PM10 でHB-1を鳴らした。ソフトは、まったく同じものを使用。そのため、両者の違いが非常によく出ていたのではと思われる。
この日のためにわざわざ福岡から上京してくださったリリック・スタッフのお話も、実に貴重。1bitデジタルに強い同社のこと、今後はDSD対応DAC(X-DU10)なども楽しみだ。
休憩時間には、参加者から両陣営技術陣に向けて、なかなか鋭い質問も飛んだ。「うしろに控えているタンノイのスーパー・レッド・モニターもぜひ鳴らしてほしい」という声も出たが、何の準備もされていなかったため、このお楽しみは次回以降に。
ラスト30分は、アンプをマックトンの創業50周年記念アニバーサリー・セパレートに戻し、村井裕弥氏が最近『Stereo』誌などで推奨している最新ディスクを紹介。塚谷水無子が弾くゴルトベルク変奏曲(バルブオルガン版)が特に好評であった。
以下は、この日かかったディスク。
【ジャズ】
『ランドスライド』ザ・カーティス・カウンス・グループ
『土と水 Duo Live In 萩』井上博義、藤井政美
『ザ・ラスト・コンサート』MJQ
『コロレアド』ざ・低音一家
【ヴォーカル】
『時のまにまに』井筒香奈江
【クラシック】
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 塚本水無子
カリンニコフ:交響曲第1番 山田和樹
【その他】
『主人公~さだまさしクラシックス』花井悠希